† of Pupil~瞳の魔力
「僕は行かなくちゃ。この上に、幹と一二三さんがいるんだ」

「許されないよ、それは。違う。許したくないの」

「……」

「そうことづかっているの。賢一のお父さんとお母さんからも。そして、」

「幹からも?」

「そう。あくまでもそれは、できるなら、という範囲だけど」

かつん――と、彼女はさらに一段下りてくる。その右手に、鈴が。

幹の持っていたのと同じ、昨日僕が渡されたのと同じ、鈴が。

赤いリボン、銀の鈴が。

「煤祓い……鈴原……」

僕はこの時ようやく、彼女達の言っているスズハラという単語が、鈴原だと理解した。

それが、香澄姉さんの苗字だということも。

ちりん。ちりん。鈴が鳴る。ちりん。ちりん。姉さんの手にぶら下がった鈴が。

ちりん。ちりん。そして僕のポケットに入っている鈴が。ちりん。

ちりん。共鳴する。それと同時に、体が急に重たくなった。

「っ、姉さん……」

彼女は、ただ僕をまっすぐに見つめてくるだけ。

その優しげな年上の眼差しが、今は、無表情な殺人鬼のそれと被った。

頭がイってしまっているかのような。
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