† of Pupil~瞳の魔力
説明なんかされなくてもわかるさ。

姉さんが鈴を介してなにかしている。

僕に影響を及ぼしている。

音の圧力をかけているんだ。

鈴ひとつでどうやってそんなことをしているのか、その知識を与えられていない僕は、こんな場面で策を弄することすらできない。

だけどわかる。

今の姉さんは、僕の前に立ちはだかる障害だ。

昨日渡された鈴の、なにがお守りなもんか。

僕の前に立ちはだかる彼女は、けれど、なんて優しい声を紡ぐんだろう。

「賢一、たくさんあるの。知らなくていいことは。ならないの、必要には。だから、知ることもないの。悲しませたいの? 幹ちゃんを」

そして最後の一段を、姉さんは下りた。

僕と目線が並ぶ。

いや、僕はどんどん肩が下がっていく。

同じ高さに立っているのに、姉さんを下から見上げていた。

見上げていた?

違う。

見上げているんじゃなく、これは、見下されているんだ。

鈴原香澄――彼女は今、僕にとって障害だった。
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