† of Pupil~瞳の魔力
聞こえるということに違いはないのに、それが果たして聴覚によるものなのか、自信が持てない。

前後左右、木や部室の陰を見やり、空まで見上げても、声の主は見当たらない。

なのに、それは届く。

「それ以上、彼にお前の余計な知識を与える知識は必要ない」

「……ふん」

と、声に対し、一二三さんが鼻を鳴らした。

彼女は最初から声の出どころなど無視しているのか、目を閉じ、わずかに俯きながら答える。

「またお前? 昨日といい、今日といい。――もしかしてお前、コイツになにか思い入れがある?」

「……」

「答えないところを見ると、図星、か」

「…………好きなように解釈するといい」

(なんの話なんだろう)

一二三さんと『声』の会話を聞きながら、伝わってきている声の発信源がいったいどこなのか、必死に目を凝らす。

僕は耳よりも目がいい。

自分の背後を見ることができるなんていう特技、きっと学校中探してもこの僕だけだろう。
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