俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。



けど、ばっと勢いよく顔を上げられた、遥斗。




「元樹ぃぃいい!」




遥斗は叫ぶのと同時に、がばっと抱きついてきた。勢いがよすぎて、思わずふらつくが、なんとか遥斗と自分の体を支える。




「俺、感激だよ!元樹が、やっと本気に思えるやつができたんだな!」




呆れる。本当に。呆れすぎて、ふっと笑ってしまう。



…いや、そんなことどうでいいんだ。一番、重要なことを忘れていた。




「おらぁ、遥斗…アドレス教えろ!」




抱きつく遥斗を引き離し、携帯をポケットから取り出す。




「もう、せっかちなんだからー」




口を尖らせながらも、遥斗はりさのアドレスを探してくれているようだった。



てか、冷静に考えてみると、なんで同じ中学ってだけで、アドレス知ってんだ?



今さらになって、疑問が浮かぶ。




「あ!あったあった!

元樹、赤外線するよ!ほら携帯貸して!」




けど、今になって聞けない。事が進みすぎた。



遥斗によって、俺の手から取り上げられた携帯が、ようやく戻ってくる。




「ほら!それに、りさちゃんのアドレス入ってからな!」




元気よく笑って、遥斗は屋上のドアへと近寄った。




「あ?遥斗、戻んのか?」



「あったりまえ!元樹の話、聞けたからね~」




満足そうに、へらりと笑った遥斗は、ひらひらと手を降って、屋上をあとにした。


< 12 / 68 >

この作品をシェア

pagetop