俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
けど、ばっと勢いよく顔を上げられた、遥斗。
「元樹ぃぃいい!」
遥斗は叫ぶのと同時に、がばっと抱きついてきた。勢いがよすぎて、思わずふらつくが、なんとか遥斗と自分の体を支える。
「俺、感激だよ!元樹が、やっと本気に思えるやつができたんだな!」
呆れる。本当に。呆れすぎて、ふっと笑ってしまう。
…いや、そんなことどうでいいんだ。一番、重要なことを忘れていた。
「おらぁ、遥斗…アドレス教えろ!」
抱きつく遥斗を引き離し、携帯をポケットから取り出す。
「もう、せっかちなんだからー」
口を尖らせながらも、遥斗はりさのアドレスを探してくれているようだった。
てか、冷静に考えてみると、なんで同じ中学ってだけで、アドレス知ってんだ?
今さらになって、疑問が浮かぶ。
「あ!あったあった!
元樹、赤外線するよ!ほら携帯貸して!」
けど、今になって聞けない。事が進みすぎた。
遥斗によって、俺の手から取り上げられた携帯が、ようやく戻ってくる。
「ほら!それに、りさちゃんのアドレス入ってからな!」
元気よく笑って、遥斗は屋上のドアへと近寄った。
「あ?遥斗、戻んのか?」
「あったりまえ!元樹の話、聞けたからね~」
満足そうに、へらりと笑った遥斗は、ひらひらと手を降って、屋上をあとにした。