俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
この気まずい雰囲気の中、昼食は食べづらい。
志帆は彼氏と、昼食食べに行くし、一緒にいる人がいない私は、一人になりたくて屋上に来ている。
けれど、木島元樹がいるのなら、私が屋上に来ている意味がない。
どっか行ってくれよ、木島元樹。なんて思ってると、すぐ傍からぐぅっという音が聞こえた。
それが、木島元樹のお腹の音だと、認識するまで、あまり時間はかからなかった。
「……お前…」
ぷっと吹き出してしまった。笑いが止まらない。
「お腹空いてんの?」
笑い混じりに、話続ける。
「購買でも行ってくれば?」
どこからともなく、クツクツと笑いが込み上げる。
「……るっせぇな…」
力なくそう言った、木島元樹はくしゃくしゃと、頭を掻いて言葉を繋げた。
「金、持ってきてねぇんだよ…」
小さな声だったけれど、私はきちんと聞き取れた。
意外にもダサい。なんて思ったけれど、他の不良とは違って、飾らないところとか、感情が様子に現れてしまってるところとか、なぜか面白い。
「今日だけ、お金貸してあげる」
木島元樹の様子を見ていると、なぜか貸してあげたくなってそう言った。500円を差し出すと、木島元樹は、俯いてた顔をいきなり上げて
「そうこねぇとな!」
そう言って、くしゃっと笑う。さっきまでの、お前はどこにいったんだよ。
呆然としている私から500円を受け取って、いや正しくは奪い取って、屋上を飛び出した。
かと、思えば、屋上のドアを開け、木島元樹は顔を覗かせる。
「りさも一緒に購買行くぞ」
「……は?」
私の行きたくないという思いを無視して、木島元樹は私に近づいてきた。腕が、ぐっと捕まれて、屋上から引きずり出される。
…なんつぅ、力なんだよ。ただ、純粋にそう思った。