俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
少しは抵抗したが、ずるずると引きずられるように、購買まで歩かされた。
階段を下りてても、廊下を歩いてても、みんなの視線は、こちらに向けられる。
やっとの思いで、学校の購買に着いた。
「りさは、食いてぇもんあっか?」
「は?ないわよ、そんなの」
それよりも、帰りたい。みんなからの視線が痛くて痛くて、しょうがないんだけど。
「じゃ、俺のもんだけ買っちまうぜ?」
「うん」
買っちまえ!買っちまえ買っちまえ!
私は、とりあえず帰りたい。逃げ出したい。こんな不良とつるむ女だって、思われなくないんだよ。
みんなからの視線も、痛いくらいに感じる。みんなが、こちらを見て、何ならこそこそと話し始めた。
ため息が出そうだわ。ため息より、先に涙か?なんて考えていると
「よお、元樹~!」
猿長遥斗が近寄ってきた。ばちっと、遥斗と視線がぶつかる。
「…りさちゃんも、久しぶり」
少し眉を下げて、私に優しく笑いかける。“久しぶり”そう言われて、少し胸がきゅっと締め付けられた。
「うん、久しぶり」
胸が苦しい。正常に戻そうとすればするほど、乱れていくばかりで。その場に、いてもたってもいられなくなる。
とりあえず、ここを去りたい。そう思って、私は嘘を吐く。
「ご、めん…私、お腹痛くなってきた、から…保健室行ってくる…!」
お腹なんて痛くない。本当に痛いのは、私の心。
二人に背を向けて、走って離れる。背中に感じた視線は、木島元樹のものか遥斗のものか、わからないけれど。