俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
二人から離れて見えなくなった時点で、走っていた足を止める。そして、ゆっくり歩く、保健室に向かって。
ガラガラ、と音をたてて開いた。保健室には、先生も生徒も誰もいない。
私は、一人でベットまで行き、寝転がって布団をかぶった。頭が隠れるくらいに深く。
乱れる鼓動を、乱れる思考回路を、整えるために。
「…ふぅ」
一息吐いて、自分を落ち着かせる。
遥斗と木島元樹が、仲良しなのは知っていた。私のアドレスも、遥斗が木島元樹に、教えたのだから。
私と遥斗は、中学三年生のとき、ずっと付き合っていた。
けれど、三年の終わりごろ、遥斗が他の女の子と、抱き合っているところを私が見てしまった。
それが、原因で私は別れ話を切り出したけれど、遥斗は否定した、あの行動には理由がある、と。
言い訳なんて聞きたくなかった。だから、一方的に別れを告げた。遥斗は、納得していなかったみたいで、何度も話しかけてきて、何度も連絡をくれたんだけれど。
無視した、遥斗のことを。私が、 弱かったから。私が、子供だったから。遥斗の言い訳を聞くと、きっと信じきってしまう。それが、怖くて。
そして、遥斗も無視する私を諦めて、話しかけもせず、連絡もくれなくなった。
遥斗は、それからずっと、私を忘れたかのように、楽しそうに過ごしている。
まだ、私は遥斗を忘れられずにいるというのに。
「……うっ…うぅっ」
遥斗のことを思い出すだけで、涙が止まらなって、ぐっと声を押さえて泣く。