俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。




夢の中では、もうなにも考えてなかった。真っ白な世界の中に、私はいた。



いっそ、このままで。なんて思ったけれど、授業の始まるチャイムが鳴る。



静かな保健室には、チャイムが響き渡り、嫌でも目が覚めた。



ゆっくりと起き上がると、ベットの右に添えられていた、一つのイスが目に入った。



そのイスは、普段は保健室の端に置いてあるもの。きっと、誰かが持ってきたんだろう。



けれど、だれ…?志帆が、木島元樹か遥斗に聞いて、駆けつけたの?それとも、木島元樹か遥斗のどちらか?



なんて考えているとき




「あ…目が覚めたのね」




保健の先生と目が合った。




「5限目は、ゆっくり休みなさい」




保健の先生は、優しく笑って、イスに座った。



先生なら、知ってるかも。だれが、ここに来たのか。そう思って、先生に尋ねた。




「先生、だれか私のところに来てた?」



「…あぁ、そう言えば、来てたわよ。

男の子が一人」



「どんな男!?」




そう聞くと、保健の先生は、少し驚いたように目を見張ったが、すぐに




「先生は、資料に目を通していたから、顔まで見てなかったの。

…ごめんなさいね」




申し訳なさそうに笑った。

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