俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
「…志帆?」
なぜか返事のない志帆を見ると、志帆はぴたりと立ち止まる。
なぜ。
なぜ、いきなり、立ち止まる?
「…、ありゃ」
間抜けな声を出した志帆は、眉を潜める。志帆の視線の先をたどれば…。
なに、あいつ。不良?暴走族の総長?
それにしても、派手な服着て、朝から学校の前にいるなんて。
だれか、待ち構えてんのか?
どっちにしろ、私らには関係ないことだけど。
「ほら、志帆。
なに止まってんの、行くよ?」
呆然としたままの志帆を引っ張ると
「だめだめ!さっきから、木島元樹(キジマモトキ)が、こっち見てんのよ!
今、行ったら、確実に殺される…」
断固として、志帆はその場を動かない。
「あんな不良が、私らに用なんてあるわけないでしょ、ばか。
志帆が行かないなら、先行くからね」
そう言って、歩き出そうとすると、志帆は慌てたように、私の隣まで走ってきた。
「なるべく、目合わせちゃだめだからね!」
こそっと、私に耳打ちする。
まず、あの不良がこっち見ない限り、目が合わないし。
「…はいはい」
目が合うことは、まずない。気づかないふりをして、その不良の横を通りすぎる。
所詮、見ていたなんて、志帆の勘違いにしか過ぎない。その証拠に、不良も絡んでこなかったから。