俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
不良の横を通りすぎると
「はぁ…よかったー!」
志帆は、安心したように笑顔を見せる。いつもの志帆に戻った様子。
「よかったね、志帆」
本当に、嬉しそうな志帆を見て、頬が緩む。志帆も、いつもどおり元気よく笑った。
…なんて、平穏な雰囲気が戻ってきたのも、束の間。
「なあ、お前りさとか言ったか?」
後ろから聞こえるのは、どこか透き通った低音ボイス。
…まさか、と思う。
まさか…あいつだったり、しないよね?
嫌な予感がするが、さっと振り返る。
「よお…お嬢ちゃん」
…今日は、とことんついてない。
こんな不良男に、私なんかしたっけ?いや、していない。
…それとも、忘れちゃっただけ?けど、こんな派手なやつ、忘れるわけがない。
じゃあ、なに?不良が、私に何の用?
「そんな難しい顔すんじゃねぇよ」
可笑しそうに笑う。
…私は、全然笑えないんだけど。