俺様ヤンキーと切ない恋の途中で。
「私、不真面目で俺様なやつって嫌いなの
…意味わかるよね?」
要するに、この不良が嫌いってこと。
そろそろ怒っちゃえばいいのに。調子のんなって、うぜぇんだよって、文句言ってくれればいいのに。
殴ってくれても構わないから、こいつにだけは好かれていたくない。お願いだから、嫌いになってほしい。
「俺のことが嫌いって言いてぇんだろ?」
不良は、また楽しそうに笑う。
「上等だ。惚れさせてやろうじゃねぇか」
笑えない。奴は、楽しそうに笑うけれど。この場にいると、頭が可笑しくなりそうだ。
「勝手に言ってれば?
アンタに惚れるつもりなんて、さらさらないけどね」
とりあえず、早くこの場を去りたい衝動に駈られる。
私は、そそくさにその場から逃げた。くるりと、踵を返し教室へと走り出す。
「志帆!行くよ!」
立ちすくむ志帆の、腕を掴んで。
できるだけ、全力で走る。あの不良から、一秒でも早く、一㎜でも遠くに、離れたくてしょうがなかった。