斜め上75度の景色。
「次郎の隣りってさ、すごい心地良いんだよね」
「……」
「いつも年上のあたしを馬鹿にしてさ、年下なのに偉そうにして…まぁ、本当に成績は良くて偉いけどね」
「成績はってなんだよ…」
「けど、次郎の隣りは心地が良いの」
「…」
「いつもさりげない優しさであたしを守ってくれる次郎の隣りはすごい居心地が良いの」
階段を登ってドアを開けて屋上に出ると綺麗とは言い難い曇った冬の空が現れる。
「ねぇ、次郎」
隣りに立った次郎を153センチのあたしは斜め上75度にある次郎の顔を見上げる。
「あたし、この角度から見る…次郎の顔が見えるこの景色が意外と好きだったんだよ?」
「…それってどういう意味の好き?」
にっこり笑って、マフラーで顔を隠す。
「恋愛としての好きだったよ」
この言葉は大好きな斜め上75度の景色を見上げながらは言えない。