斜め上75度の景色。
「そういえば、なんで雛子がいんだよ?」
今は高校3年生の2月28日。
受験も終わったあたしに明日の卒業式まで学校に行く理由はない。
「あー……今日は担任に呼び出しされたから。
久しぶりにこんなに、早く起きたから辛いよ」
苦笑いをしながら次郎を見ると、辛そうな顔をする次郎と目が合う。
「次郎…?」
「来月には…この県に雛子はもういねーんだな」
「…うん」
返事をすると白い息が零れた。
「とうとう、雛子はどこの大学に行くんだよ?」
「なーいしょっ」
次郎には県外の大学に行くことしか教えてない。
「教えろよなー。でも、雛子1人で大丈夫なのかよ?」
「だ、大丈夫だよ!」
1つ下なのに次郎はいつもあたしを子ども扱いする。
「こうやって一緒に学校行くのも、もしかすると今日が最後か?」
そうポツリと漏らした次郎の言葉に一瞬、涙が出そうになる。