【短編】佐藤君は無口
「佐藤君、消しゴムありがとうね」
「…………」
先程の授業が終わり、改めてお礼を言ってみるけど、佐藤君は相変わらず口を閉じたままコクリと頷くだけ。
同じクラスになってから結構時間が経つけれど、彼が喋っているところは見たことない気がする。
でも、別に悪い印象は全くない。
さっきみたいに消しゴムを貸してくれたり、他にも教室に飾ってある誰も見ていないような花瓶の水を換えてたり、当番じゃないのに気がついたら黒板を綺麗に消していたり。
そういうことを自分から進んでやっているところを見ると、とても真面目でちょっとお人好しな性格なんだろうなって思う。
ただ、人よりコミュニケーションが苦手なだけなのかも。
とにかく佐藤君は、無口だけどとってもいい人だ。