【短編】佐藤君は無口
その日の放課後、私は忘れ物をしたことを思い出して、少し早歩き気味に教室に戻っていた。
しかし、消しゴムといい、今日はなんだか抜けているなー……。
「……あ」
そんなことを思いながら教室の扉を開くと、佐藤君がまだ残っていた。
あっちも一瞬こちらを見たけど、またすぐ手元に目線を移して作業に戻った。
先生に頼まれたのか、複数のプリントをホッチキスでまとめているようだ。
佐藤君は先生たちに頼まれごとをされているのをよく見る。
黙って引き受けてくれるから都合がいいんだろう。
――――そうだ。