『短編』理想の上司
帰宅モードになっていた定時間際、電話が鳴った。
何気なく電話に出ると、あたしがメールを送った財務課の担当からだった。
「A様式の方はOKだったんですけど、B、C様式の数字がちょっとおかしいんですよね。こちらも急ぎですので今日中に集計してもう一度送ってもらえます?」
その言葉を聞いて、がっくりと肩を落とした。
BとCはあたしが作成した方じゃない。
「はい、わかりました」
力なくそう答えて電話を切ると、思わずため息が漏れた。
今日は残業だ。
また失敗してしまった。
動揺したまま作業していたとはいえ、そんな言い訳は仕事には通用しない。
失敗続きの自分が嫌になる。
あーーっ!もうっ!!
先輩たちが次々と退社していく中、あたしは気合いを入れ直すために顔をぱちんと叩いて、もう一度数字のチェックを始めた。