『短編』理想の上司
「俺はわがままだから、欲しいものは絶対手に入れたい」
一歩ずつあたしに近づいてくる。
少し鋭い眼光に、あたしはひるみそうになってしまった。
「君みたいなとろい子見てると、いじめたくなるんだよね。反応がいいと余計にね」
とろいって。
確かに仕事は失敗ばかりだけど。
「紗智みたいなとろい子には、俺みたいなのが丁度いいんだ」
「そんな……とろいとろいって何度も言わないでください……」
俯いたまま呟くと、課長は、
「そうやってすぐ拗ねるところも子供みたいだよね」
と言って、鼻で笑った。
「……馬鹿にしてますか?」
思いきってちらりと上目遣いで課長を見ると、課長はにやりとして。
「いいや」