『短編』理想の上司
昼休み。
同期入社の麻里ちゃんと社員食堂でランチを食べていると、
「いいなぁ。紗智(さち)ちゃんは。永瀬課長に手取り足取り教えてもらって」
と、心底羨ましそうに呟き、そして大きなため息をついた。
「あたしなんて、溝口主任だよ?別に悪い人じゃないんだけどさぁ……」
そう言うと、麻里ちゃんはまた大きなため息をつき、サンドイッチをぱくりと口に入れた。
どう返せばいいのかわからず、
「仕事はちゃんと教えてくれるんでしょ?」
とありきたりな返答をすると、
「まあ、仕事はね」
と言って、ふてくされた。
「あたしも永瀬課長だったら、もっと頑張れるのになぁ」
麻里ちゃんは頬杖をつきながら、くちびるをとがらせた。