『短編』理想の上司
午後。
あたしは永瀬課長に頼まれた資料を、資料室へ取りに来ていた。
ところがなかなか見つからない。
棚の上の方から順番に背表紙を目で追っていくけれど、それらしいものが見当たらない。
どこにあるのかなぁ……。
別の棚を見てみても、やはり見当たらない。
腰を屈(かが)めて、棚の下段の方ものぞいてみる。
ないなぁ……。
思わずため息を漏らしたその時、突然視界が暗くなったので、はっと顔を上げた。
するとそこには、棚に手をついてあたしを見下ろしている永瀬課長がいた。
あまりに顔が近かったので、あたしはびっくりしたのと同時に赤面してしまった。
そんなあたしをよそに課長はとんでもないことを口走った。