『短編』理想の上司
何がなんだかわからないまま、とりあえず自分の部署へ戻ると、そこにはあたしがよく知っているいつもの永瀬課長がいた。
さっき資料室に現れたのは、本当に永瀬課長だったのかな。
半ば信じられないまま緊張した面持ちで、自分の席についた。
ちらりと彼の方に目をやると、何事もなかったように淡々と仕事をこなしている。
あたしもなんとか平静を装おうとパソコンのディスプレイを見つめるけれど、映るのは意地悪な笑みを浮かべたさっきの永瀬課長の顔。
『パンツ見えそう』
課長の言葉を思い出してしまい、顔から火が出そうになった。
『君さ。俺のこと、好きでしょ?』
なんていう自信?
『俺の女になれよ』
課長の声が頭中で響き渡る。
そして、あたしはようやく事の重大さに気づいた。