菜の花の君へ
智香子はもう過去の人だと割り切った態度をとろうとしていたが、和之に呼び出されて、突然の同居の申し出に戸惑うばかりだった。
「今、なんて?どうして・・・今頃、私の目の前に現れて、そんなことをいうんですか?
独身なんでしょう?私なんか引き取ったら結婚できなくなってしまいますよ。」
「残念だけど、そういうつきあいしてる女性はいないんだ。
それよりも、今世話になってる叔母さんって離婚するんだってな。
もう次に世話になるとこなんてないんだろう?」
「調べたの? 私にとっては生きていければいいんだから、学校をやめて働くこともできるわ。
若いんだもん。いざとなったら、手っ取り早く稼ぐことだって・・・」
「そこまで決心してるのなら、俺と暮らしても問題ないはずだ。
いいか、明後日には引っ越ししてこれるようにしろ。
学校の手続きなんかは俺がやっておくから、荷物をすぐまとめておくんだ。」
「どうして、勝手に決めるの?
かずくんは出て行った人なんだし、もともと家族じゃないんだから、関係ないじゃない!」
「家族じゃないだと・・・!」