菜の花の君へ
ベッドに倒れこんだものの、眠ることができない。
直視することはできなかったが、裸で自由を奪われた和音が泣いていることはわかった。
明日の朝、何て声をかければいいのだろう・・・。
今までどおりの笑顔で挨拶して用意をして出かけることができるのだろうか。
おそらく、警察の取り調べもあるのだろう。
(私は和音さんと同棲してることになっちゃうのかな・・・。
年下の兄嫁と年上の義弟って変だよね。)
「だめだ・・・言葉なんて思い浮かばない。」
そして翌朝、智香子がダイニングへ行くと和音からの手紙がテーブルに置いてあって朝食の用意までしてあった。
『迷惑をかけてごめん。僕はもう大丈夫だから。
昨日はうっかりと彼女の入れたお茶を飲んでしまって、お茶に体の自由を奪ってしまう薬が入っていたんだ。
君を守る立場なのに、好き放題にされてしまうなんて本当に情けない。
仕事は気分が悪かったら無理して来なくていいから。』
「和音さん・・・無理してるのはあなたの方です。
もっと自分を大切にしてほしいのに。」
顔を合わさなくてホッとするどころか、余計に心配になってしまう智香子だったがとりあえず大学へと出かけるのだった。
講義を受けても、昨日の千夏の言葉の1つ1つが耳に残っていて、智香子は放課後ふらふらと学内を歩きまわった。
そして、食堂の前に差し掛かった時、人とぶつかって床に倒れた。
「きゃあ!」
「智香ちゃん!大丈夫か?足はぐねってないか?」
智香子が聞き覚えがある声に顔を上げると、京田輝明が心配そうな顔をして智香子の両手をつかんでいた。
「京田さん・・・。す、すみません。私が前をしっかり見てなくて。
それじゃ私は帰りますから。・・・痛っ!」
智香子は足首を捻挫して京田に医務室へと連れていってもらうはめになった。
そして、懐かしくも優しい京田の顔を見て、思わず昨日の出来事や今の生活のことをしゃべってしまった。
「そっか僕が准教授になるまで、いろんなことがあったんだね。」
「准教授!!あ、あの私なんにも知らなくて・・・お祝いを言わないといけないんでしたね。
すみませんでした。
それにお忙しいのにこんなお手間をかけてしまって申し訳ないです。
もう、お仕事にもどって・・・」
京田は智香子の肩を優しく抱きしめてきた。
「お兄さんだと思ってた人と結婚したと聞いて、そういうことだったのかって、あきらめてつらかったよ。
亡くなられたときいて、報いだとも思ったときがあった。
でも、君の口から事情をきいてやっぱり僕が今まで非力だったことを認めるしかないんだってわかった。
けど・・・ね、今の僕なら君を受けとめられる自信はある。」
「あの・・・私は。」
「あえて先生の立場で言わせてもらうけど、手近なところから愛情をもらうのをやめるべきだと思う。
もっと自由で、もっと無のところから真剣に好きな人を見つめることをおすすめしたいな。」
直視することはできなかったが、裸で自由を奪われた和音が泣いていることはわかった。
明日の朝、何て声をかければいいのだろう・・・。
今までどおりの笑顔で挨拶して用意をして出かけることができるのだろうか。
おそらく、警察の取り調べもあるのだろう。
(私は和音さんと同棲してることになっちゃうのかな・・・。
年下の兄嫁と年上の義弟って変だよね。)
「だめだ・・・言葉なんて思い浮かばない。」
そして翌朝、智香子がダイニングへ行くと和音からの手紙がテーブルに置いてあって朝食の用意までしてあった。
『迷惑をかけてごめん。僕はもう大丈夫だから。
昨日はうっかりと彼女の入れたお茶を飲んでしまって、お茶に体の自由を奪ってしまう薬が入っていたんだ。
君を守る立場なのに、好き放題にされてしまうなんて本当に情けない。
仕事は気分が悪かったら無理して来なくていいから。』
「和音さん・・・無理してるのはあなたの方です。
もっと自分を大切にしてほしいのに。」
顔を合わさなくてホッとするどころか、余計に心配になってしまう智香子だったがとりあえず大学へと出かけるのだった。
講義を受けても、昨日の千夏の言葉の1つ1つが耳に残っていて、智香子は放課後ふらふらと学内を歩きまわった。
そして、食堂の前に差し掛かった時、人とぶつかって床に倒れた。
「きゃあ!」
「智香ちゃん!大丈夫か?足はぐねってないか?」
智香子が聞き覚えがある声に顔を上げると、京田輝明が心配そうな顔をして智香子の両手をつかんでいた。
「京田さん・・・。す、すみません。私が前をしっかり見てなくて。
それじゃ私は帰りますから。・・・痛っ!」
智香子は足首を捻挫して京田に医務室へと連れていってもらうはめになった。
そして、懐かしくも優しい京田の顔を見て、思わず昨日の出来事や今の生活のことをしゃべってしまった。
「そっか僕が准教授になるまで、いろんなことがあったんだね。」
「准教授!!あ、あの私なんにも知らなくて・・・お祝いを言わないといけないんでしたね。
すみませんでした。
それにお忙しいのにこんなお手間をかけてしまって申し訳ないです。
もう、お仕事にもどって・・・」
京田は智香子の肩を優しく抱きしめてきた。
「お兄さんだと思ってた人と結婚したと聞いて、そういうことだったのかって、あきらめてつらかったよ。
亡くなられたときいて、報いだとも思ったときがあった。
でも、君の口から事情をきいてやっぱり僕が今まで非力だったことを認めるしかないんだってわかった。
けど・・・ね、今の僕なら君を受けとめられる自信はある。」
「あの・・・私は。」
「あえて先生の立場で言わせてもらうけど、手近なところから愛情をもらうのをやめるべきだと思う。
もっと自由で、もっと無のところから真剣に好きな人を見つめることをおすすめしたいな。」