菜の花の君へ
寮のベッドで智香子は考えてみた。

(和音さんは和之さんが好きじゃない・・・?)


両親から束縛されない時間がとれてやっと居場所を見つけた実の兄に実家へもどってきてくれないかと頼んだ・・・。


けれど、兄の和之は智香子のことや自分の進む道を理由に実家に住むことを拒絶して訪問することもほぼなかったという。


(その間、和音さんはどういう生活をしていたのだろう?)


母親は心を病んで、父親はお金と名誉におぼれていた。

会社にまつわる人たちは和音さんの才能にぶらさがりたがった。

和音さんといっしょにがんばってきた社員の収益は役員という名の悪魔に吸い取られた。

(お金も名誉もない世界へとばされてしまった父親をよく思う人も良く思わなかった人も、かかわった人は和音さんをお金の製造機として扱った・・・?)



それから智香子は和紗の言葉を思い出していた。


「私は和之に弟の秘書になってくれと頼まれたんです・・・。」


深夜にもかかわらず、智香子は和紗にメールを送った。

「突然こんな時間にメールしてすみません。
1つ教えてもらえませんか?

和紗さんは和音さんが気に入っているといいましたよね。
和之さんが亡くなる直前の頃には和之さんのことをどう思っていたんでしょうか?  

中務 智香子」


(もう遅いから返事は明日だよね・・・。)

携帯を置いて眠ろうとしたとき、すぐに和紗からメールの返信がきた。


「私のことをどう思う?じゃなかったのは残念・・・w

和之とはずっと施設暮らしからの親友だよ。

君の知りたいことはいろいろと複雑でね。
今の俺が言えることは、近い未来にわかるだろうってこと。

おやすみの言葉は電話で言いたかったな。おやすみなさい。
(⌒∇⌒)ノ""マタネー!

あなただけの執事  和紗より~w」


(もう、和紗さんったら・・・。近い未来に何がわかるんだろう?)


翌日、智香子は午前中のうちに京田のところへ手伝いに行き、午後から講義を受け、夕方には黒田画廊近くの喫茶店で和紗と話をした。


「近い未来にわかるんだったら今、教えてもらっても答えは同じだと思ったんです!
教えてください、もったいぶる何か深い理由とかあるんですか?」


「いや・・・ほんとに智香子さんは行動的だなぁ。
そういうとこがちっちゃな頃から魅力的で、和之のとこを訪ねてすっかり気にいってしまったら・・・危うく和之に殺されるかと思ったよ。」


「えっ!?」


「最初は冗談かと思ってたけど・・・和之の中にはちっちゃな頃から積もり積もった感情がくすぶっていたんだと思う。

大切なものを取り上げられる恐怖。
だから、彼は好きなものに執着することを恐れて、遠ざけて過ごそうとする癖があった。
だけど、君を遠ざけて眺めるだけでは愛せないことに気がついた。

俺が君に触れることを徹底的に禁じてくれた。
いたしかたないなとは思っていたけど・・・そうされると触れたい感情って逆に燃えると思わない?」
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