菜の花の君へ


高校生の智香子は思い出の中にある和之に密かに恋心を抱いていたことを悟られたくない理由で、思わず同居を了承してしまったのだった。



その後、和之のマンションに引っ越して智香子は妹の顔をしてずっと住んでいる。


和之は祖父のところにいたとき同様、家庭では誠実でときには智香子にとって口うるさいときもあるほど、兄らしい兄貴として生活は続いている。



智香子の進学も和之がすすめてくれたこともあって、智香子はN大にふつうの大学生として通うようになった。

しかし、サークル活動や私的に使うお金の面倒までかけられないと思った智香子は、近所のスーパーでアルバイトを始めた。

和之もさすがに、もう何でも反対することはできないと思い、しぶしぶアルバイトすることは了承していた。



「あのね、私いちおうサークル活動に入ることができたんだよ。」



「いちおう・・・ってなんだ?
バイトやめて真剣にやっていいんだぞ。
学生のうちしか楽しめないことは多いんだからな。」



「バイトはやめないわ。少しずつでもやっと貯金らしいものができるようになったし、かずくんが結婚したら私だって自立しなきゃいけないもの。」




「あのなぁ・・・そういう心配はいらないって言っただろ。
おまえが嫁にいってからでも、俺は大丈夫だから。

それに、おまえにはずっと親戚の家で苦労させっぱなしだったんだから幸せになってもらわないと。」



「お父さんみたいな発言ね。ジジクサイよ~
かずくんは高校のときも女生徒や女の先生にモテモテなんだから、その誰かに結婚してくれって頼めばみんな簡単にOKしちゃうと思うけどなぁ。」



「智香子、俺と結婚してくれるか?」



「な・・・!?えっええぇーーーー!」




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