菜の花の君へ
夕飯をすませて、はっと智香子は我に返って叫んだ。


「ああっ！うちに何にも連絡いれてないわ。
どうしよう・・・うちのご飯作らなきゃいけなかったのに。」



「そりゃ、済まないことをした。いちばんに気がついてなきゃいけなかったのに・・・。
あ、おうちの電話番号を教えて。
僕の携帯がつながるようだったらご家族にここの説明をしてあげるから。」



京田が智香子に番号をきいてすぐに電話をかけると、和之がすぐに電話に出た。


「もしもし、智香子さんのお兄さんですか？
僕はＮ大理学部で助手をしている京田といいますが・・・」



京田の説明をきいた和之が智香子に代わってほしいと言ったのか、すぐに智香子は電話で和之と話をする。



「なんで、川の清掃活動なんて行ったんだ？
それに、理学部助手ってどういうつながりの男なんだ！
すぐに大学まで迎えにいくから、入口で待ってるんだ。」



「あ、いいよ。かずくんはいつもどおり明日仕事があるし、今日はもう寝てて。
こっちはまだ、いろいろ仕事がいっぱいで、お世話しなきゃいけない人がいるの。
京田さんと大学のボランティアの人たちだけじゃ、交代で寝ることもできないのよ。
だから・・・」



「だめだ！いくら人助けでも、年頃の娘が男だらけのところで仮眠をとるなんて・・・迎えにいくから、朝もう一度出直せばいいだろ。」
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