菜の花の君へ

和之は読んでいた本を机に置くと、智香子をにらみつけて言った。


「ボランティア活動ってのは男が猫なで声を出して誘うものなのか?」



「え・・・?」



「地震のときのあいつだって、もう会うことがないとか言ってなかったか?
電話がかかってきて、もうしばらく助手生活が続くけど会ってほしいとかなんとか言ってたぞ。

今日のサークル代表ってやつなんて、いきなり『チカちゃ~~ん』ってあまえやがって、どういう付き合いしてるんだ?
男さがしのサークルなんてやめておけ。」



「男さがしなんてしてませんよ。
成り行きでお話したり、リーダーだからお話はするのはあたりまえだし。

それにもう私は大学生だし、先生は私の担任でもないんだし私が判断しなきゃいけないことに首をつっこまないで。」



「危ない危ない・・・。おまえはぜんぜんわかってないな。
高校生のときと違って教師が仕事としてああしなさい、こうしなさいって指導してるわけじゃないんだぞ。

年は多少違っても、学生どうしで対等な者が命令を出して、何でもきいていたら泣くのはおまえの方だ。
男の目的はほとんど決まってるだろ。」



「かずくんもそうなの?大学生のとき、そうだったの?」



「はぁ・・・。えっ・・・」
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