菜の花の君へ
智香子はどきどきしながら、笑顔で告白する和之にしがみついた。
(私ふっきれてなんていない。思い描いていたとおりの展開になろうとしてどきどきしているのに・・・どうしていいかわからない。)
「智香が高校卒業したらプロポーズする予定だったんだ・・・。
ちょっと事情があってしそびれてしまって、これは大学卒業まで待つしかないかなって思ったりもしたんだけど・・・やっぱりだめだ。
1年目からこう次々と男から電話なんて・・・きつすぎるって。
高校のときはそんなにモテてなかったろ?
あのときは女の子の友達が多かったから、安心してたとこあったんだが最近のおまえはどんどんきれいになって俺の心配ももう限界だ。」
「嫉妬してたの?うふふふ・・・じゃ、大学卒業まで・・・今の話はきかなかったことに・・・」
「だめだぁーーー!式はあとでもいいから、入籍はすぐ済ませてだなぁ・・・頼む、俺と結婚してくれ。智香・・・。」
「はい。そんなの早く言ってくれてたら、もっと嫌がらせして楽しめたのに。
うふふふふ。」
「おまえは鬼か・・・!でも、しっかり契約は成立してしまったからなぁ。
今夜はフライングして今までの我慢を取り返させてもらうぞ。
ではいただきま・・・いや、智香子、愛してる。」
(そう、そんな夢みたいな告白と結ばれた日が遠い思い出の場面のようになってしまうなんてこのときは思わなかった。
こっそりとひっそりと思い続けた男性がずっと私だけを見ていてくれたのがとてもうれしくて幸せだった。)