菜の花の君へ

そこから先は智香子にとっては夢物語が続いていた。


周りは涙を流す人々。


自分の薬指にはかすかに血のついた指輪が。


そして、見知らぬ人たちが家の中を見学、そして整理をし始め、何も音がしない世界からやっと人の声がして、目の前に和之が現れたことで智香子は人間にもどった。



「和之さん・・・遅かったじゃない。」



「僕は和之じゃない。中務和音(かずと)和之の弟だ。
君が智香子さんだね。」



「なかつかさかずと・・・?弟?何をどっきりやってるの。
もう、かずくんの家族は私とおじいちゃんだけじゃない。
ヘタな演技しないでよ。」



パシーーーーーン!!!!




「きゃあーーーーー!痛い。」



「中務和之のことを本気で愛していたと言えるなら、逃げるのはやめろ!」



「逃げる・・・?私は・・・ここは・・・。」
< 35 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop