菜の花の君へ
智香子はそのお店の中を思い出していた。
以前、新しいもの好きの友人に引きずられて行ったことがあったのだ。
店内はイタリア料理店っぽくて、高そうな絨毯敷きの床で。
「あの絨毯は和音さんの会社の商品だったんですね!」
「そういうこと。他にも内装はすべてわが社で用意したものばかりだ。」
「じゃ、店の奥に飾られていた畑の絵も、どこかで買い付けてきたんですか?」
「奥の絵って、トウモロコシ畑に女の子がいるアレ?」
「はいっ。あの絵の色使いがとても優しくて、全体的にかわいらしさがいっぱいで大好きなんですよ。」
「そう・・・。あれは買ったものじゃない。
あれは、昔・・・僕が学生のときに描いたものなんだけどね。
事情があって家には置けないから、シェフに置いてもらったんだ。」
「か、かか・・・かずと・・・さん・・作なんですか。ほ、ほんとに?」
「な、何その顔は?僕はお金にしか興味ないとでもいいたそうだね。」
「い、いえ。それに和音さん、なんか慣れてきたらキャラが俺様モードというかかわってきてませんか?」