菜の花の君へ
和音はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、さらっと言い放つ。
「明らかに無能なヤツを決定づけてしまうと、上下関係ははっきりするからね。
最初は、お金に執着しない慎ましやかな女性かと思って接したけれど、そうじゃなくて、君は無知なだけなのがわかったんで、これからは指導しながらつきあわないといけないなって思ったのさ。」
「なっ・・・無知って。ひどい!
でも、私は和之さんの妻で・・・。
家計簿だってちゃんとつけてたし、生活費だってお給料から決めた額をきちんと管理してたんです。」
「子どものお小遣い帳のようなものは管理とはいえない。
会社のお金の流れも知ろうとしなかった兄さんのことだから、計画をたててお金をかけて楽しむイベントを考えるより、家でゴロゴロしながら生活費が結果的にあまってたっていう範囲のことだろう。」
「あ・・・。どうしてそんなことまで。」
「調べさせたわけじゃないぞ。予想がついただけだ。
君の昨日の態度からしても、お金がなくても幸せだと決定づけて考えているから本当にいいものがあっても見ようとしていない。
まだ若いから、将来のためにって貯金するのも確かに方法だが、お互いの気持ちを確認したら結婚してたが先だなんていい加減すぎる行為だ。
お金が余っていたなってあわてて指輪を調達したのに、最愛の人に指輪をしてもらえないなんてとことん哀れで・・・」
「やめて!!!やめてください。指輪には血が。和之さんの血がついてて、気持ち悪いとかじゃなくて、指輪をして洗いものとかしたら和之さんの存在がとっても遠くなっちゃいそうで嫌なんです。
事故は悲しい思い出だけど、お腹に子どもも与えられないまま生きていかなきゃいけない私にとっては指輪についた血だって大切なものです。」