菜の花の君へ
智香子は大学では中務智香子と名乗っていた。

友達は彼女が結婚してまもなく未亡人となってしまったことを知っている。


そして住まいが和音の家に引っ越したことも徐々に広まってしまっていた。



そんなことを聞きつけてなのか、大学一のお高いお嬢様の長戸早紀世が智香子に声をかけてきた。



「坂下さん、いえ、今は中務さんだったわね。
あなた如月織物の社長さんの家にころがりこんだって本当なの?」


「ま、まぁ・・・。はい。お世話になっています。」



「中務和音さんだったかしら。若いのにとてもやり手で賢くて、芸術的センスも抜群のお方ってきいたわ。

なくなったご主人とはどういうご関係なの?
イケメンだって噂もあるけど、実際はどう?

よかったらわたくしがあなたのご主人の仏壇に手を合わせにいってあげてよ」



早紀世の目は和音のことで興味津々だと言っている。


「和音さんはほとんど家にはおられません。
代表なのだし、ほとんどお仕事で。

いちばんお世話になっているのは私の生活面ですね。
つまりお金の部分は頼りっぱなしです。」



「な~んだそんな関係なわけ。でもよかったじゃない、学校やめなくて。
ほんといいパトロンがご主人のご兄弟にいてよかったわね。じゃ。」
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