菜の花の君へ
首をかしげながらそっと、スケッチブックをもとにもどそうとしたとき、きれいな表紙の大きなファイルを見つけた。
菜の花の絵がファイルごしに見えたので、智香子にはこれが写メの絵だと思った。


「こっちは色もついてるみたいね。えっと・・・あっ!!」


ファイルをあけて菜の花畑の絵を見てみると、そこに立っているのは小さな女の子ではなく、若い女。
しかも、自分にそっくりの・・・。

(もうすぐ20才って・・・これ私なの?
それと、なんだかこれって・・・もしかして・・・この場所って・・・おじいちゃんの畑!?

どうして和音さんがこの畑を知っているの?
僕の女の子って・・・どういう意味。)


そして色付けまでしてあるその絵の裏には

『15年ぶりの再会  智香子へ』と書かれていた。



「15年ぶりの再会って・・・。どういうこと?
和音さんがどうしておじいちゃんの畑と私を描いてるの?」



「やっぱり覚えてなかったんだね・・・。」



「きゃっ!か、和音さん・・・。あの、これ・・・勝手に見てごめんなさい。」


「かまわないよ。個展に出す前に話そうと思っていたからね。
15年前の君にこの畑で出会った。

ミツバチがたくさんいる菜の花畑でね。
そんなのおかまいなしに、うれしいのか花に突っ込んでくる元気な女の子がいた。

だから、ここで遊んじゃいけないって注意したのに、君はきいてくれなくて・・・。」



「ま、待って・・・。遊んじゃいけないってそれ・・・。」


(どういうことなの。それは和之さんが・・・。えっ!?
あれ??あれって・・・和之さんだったのかな。

もしかして・・・だめだ。記憶が・・・)
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