君にあげるたった一つのもの。
―中庭―

「来ましたねー☆曖璃。」

いったのは、たぶん、佐川 茅乃。
 
「呼ばれたから、来ただけ。」

「早速だけど~これなぁんだっ」

「…私の靴だけど。」

「返してほしいでしょー?」

「さァ?」

「返してほしければ、龍に告ってきてみてよ。」

意味がわからない。なぜ、好きでもない人に告白なんてしないといけないのか。

「あっ難しかった?じゃあ、屋上から飛び降りてみて☆」

そっちのほうが難しいと思う。

「…」

「はやくやれよ!」

「靴ほしくないのぉ?」

「…」

「もういいし。」


ボチャッ

池に靴を落とした音。

「さいごにぃ~」

ボカっ

鈍い音。多分殴られたんだと思う。

シャキっ

ハサミの音。髪の毛が切られたんだと思う。

「じゃあね~醜い人ッ」



チャイムがなる。多分今頃誰かがくる。

私は、体育座りしたまま、気を失っていく。










 


気がついたところは、保健室の天井。

「気がついたか!」

龍だった。

「龍?」

ガバッ

龍が抱きついた。
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