『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
湯殿から上がると…真っ直ぐに仏壇の前に腰を下ろし拝み始めた殿の様子を“三献の儀”で使用する盃とお銚子を三方にのせ床に置き殿の背中を眺めた。
「…さあ…。
どうする?」
殿は私に気づいて前に座り直し…婚礼用に用意された盃を見ながら私に尋ねた。
「まずは…。
これが…一の盃が小さい盃。
次の二の盃が中くらいの盃。
最後の三の盃が大きいも盃。
まず‥三段に重ねられた盃を上から順番に一つの盃で交互に三度、合計九度に渡り行います。
まずは‥一の盃を新郎から新婦へ最後は新郎の順に…。
お次は‥二の盃を新婦から新郎へ最後に新婦の順に…。
最後‥三の盃を新郎から新婦へ最後に新郎の順に酌み交わします。
お酒を注ぐ時も‥お銚子を三度傾け三度目に盃に注ぎ、飲まれる時も一、二度目は口をつけるだけで三度目に飲むのが作法でございまする。」
空のお銚子に酒を酌むふりをして‥作法を一通り説明した。
「酒はないのか…。」
「えっ…。」
そう言った殿は…また再び仏壇へと出向き腰を下ろして手を合わせるといつの間に供えたかお神酒の容器を仏壇から下げて私の前に座った。
“ 何をやらかす気なのだろう…。”
私は開いた口が塞がらず面食らった私を見てニヤリと笑うった殿は…お銚子の蓋を開けてお酒を注いだ。