『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
殿は私の様子をじっと見つめている様子で見守られる中…私は…一の盃を取り一度、二度と口をつけて三度目で盃のお神酒を喉に流しこみ殿と目があい顔を赤らめた。
媒酌人のない二人だけの三献の儀の演習だと思いつつも私は胸にこみ上げてくるものがあり複雑な気持ちで盃を三方に置き再び…お銚子を傾けてお神酒を盃へと注いだ。
殿は…一の盃をまた同じく手にとり一、二度と口をつけて一の盃を三方に置き…再び二の盃を先程の順序にならい私、殿 、私といった順序に従い最後の三の盃にお神酒を注ぎ目を細めて笑い二度口をつけて三度目で飲み干した。
「これで…吉乃は最後の盃だ。」
私は頷き盃を手にすると…二度口につけて三度目にてお神酒を飲み干した様子を見たところで帰ってきた兄が私たちの様子に驚き声をあげた。
「な…何をやっとるんだ!
吉乃…!」
突然の兄の乱入に殿はちょうど良かったとばかりに兄に手招きした。
「おおっ!
八右衛門ちょうど良かった。
お主…媒酌人の真似をいたせ。」
「ば…ば…媒酌って…!」
あまりの驚きに声を震わせ私と殿の間に座った。