『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「殿が婚儀の際になさる“三献の儀”の演習をなさりたいと申されましてお付き合いしていたのでございます‥。」
兄の乱入にホッとしたのも束の間なぜか寂しい気分で最後のお神酒を盃に注いだ。
「真似ごとだ‥!!
バシッと一発媒酌を頼む‥!
いくら演習とて気を抜くな‥!
しっかり真面目に執り行えよ!!
縁起でもないからな!」
殿の無茶ぶりな注文に兄は私を見つめガックリと肩を落とし渋々私と殿の間に座った。
「では…いざ!」
殿は最後の盃に二度口をつけて三度目一気に飲み干し私を見つめて笑った。
その笑顔に演習だというのに…顔を赤らめて微笑んだ私を見た媒酌人役の兄上は…本番さながらに声を高らかにあげた。
「今宵…。
織田信長公と生駒の娘 吉乃が婚礼の儀をつつがなく終えここに夫婦となりました事を…しかと八右衛門がここに媒酌人として見届け承認いたしまする。」
「よしっ…!
吉乃祝い酒じゃ…持ってまいれ…!」
私と…兄は殿の言葉に「へっ…。」と顔を見合わせた。
「あのう…。
これは…演習でございますよね。」
兄がおそるおそる殿に尋ねた。