『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
兄の言葉に突然笑いだし殿は申されました。
「吉乃!
これからは…そなたがこのわしの妻だ!」
「えぇっっっーー!」
私が驚く顔を見て殿はまた高らかに笑った時…計られたことを悟った。
「しかし私は最後…殿が三の盃を飲み干すところしかみておりませぬし…。」
蒼白な顔で兄がうろたえた。
「八右衛門は第2の媒酌人だ。
もとより媒酌人は…この生駒の先祖と土田弥平次だ‥。」
仏壇を差しながら殿は私の戦死した夫の名を土田弥平次の名を口にした。
「殿…。」
複雑な気持ちで胸がつまり私は声を絞り出した。
「吉乃…。
土田弥平次から…しかとこの信長がそなたをもらいうけた。
誰がなんと言おうとも…そなたがこの信長の事実上正妻だ…。
末永くよろしく頼む…。」
殿はそう申され一礼し悪戯な笑みを浮かべた。
「ほんとに困った方…。
美濃の姫はどうなさるおつもりです。」
私は怒る気分にもなれず赤い顔で頬を小さく膨らませた。