『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「マムシの姫は…織田家がもらう嫁だ…。
わしがもらいたい訳でもないしもらう訳じゃない…。
わしは生駒の屋敷からひとたび出れば…織田家の嫡男を演じる演者であろう…。
だから…わしの妻は吉乃そなたじゃ…。
八右衛門も先祖の前で誓ったのじゃ…!!
それでよいな…!」
殿の一方的な言葉に兄もホトホト困り果て頷いた後…うなだれていた。
殿はそれを見届けるとまた私に熱い視線を向けた。
殿に演者として言った言葉の重みを今更ながらに受け止め…覚悟を決め床に手をつき深々とお辞儀の後殿に誓いました。
「この…吉乃。
信長様の妻としての役…この吉乃の生涯をかけて精一杯務めさせて頂きます。
末永く仲ようお願い致しまする。」
深々とお辞儀をして顔をあげた私に殿は深く頷いた。
「あの~せめてこの事は…!」
兄がその様子をみて殿に泣き寝入りした。
「案ずるな!
ここにいるわしと吉乃と八右衛門…。
生駒のご先祖様と土田弥平次の菩提だけの話じゃ!
他の者には関係ない!
それでよいのだろう…!
吉乃…!」
殿は満足そうに微笑まれまたその殿が精一杯考えられた答えなのだと受け止め深く頷き笑った。