『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
緊張の糸が緩み殿はその間に…再び娘側へ周り込み娘の寝顔を眺めた時、顔をあげた弟と目が会い殿は思わず逃げ場を失い荷車の下へと滑りこんだ。
慌てて四輪の荷車の前方の扉を開け駆け込み娘を起こした弟の声が聞こえ急いで車の下からはいでると、開け放たれたままの荷物入れの奥に入り込み上から布をかけ身を潜めた。
足音が近付いてきて息を潜める。
娘と弟の声がして息を殺したところで車の上に止まった何匹の鳥達が注意を反らしてくれた。
その様子にひとまず安心したようだが…恐怖感を抱いた弟は仕切りにパーキングをでたいという声が聞こえてきた。
「はあ…。」
安堵の吐息をついて鳥達の協力に助けられた殿は再び眠りについた。
やがて荷車はパーキングを後にして…京都方面の道のりをひたすら急ぎ進んだ。