『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
ボンヤリ目を開けたその虚ろな視界に…愛しいあの人の顔が飛び込んできて嬉しくて微笑んだ。
「吉乃…!?
良かった…!
目が覚めぬかと思った。」
愛しい人は私を見下ろしながらホッと肩を撫で下ろした。
私は自分で体を起こそうにも体が思うように動かない。
「…殿…。
心配をおかけしてしまって…。
今…しばしお待ちを…。」
途切れ途切れに声を絞り出し…私は自分の身体を起こそうと力を振り絞ったが…体に力は入らず目眩が視界を奪っては倒れ込んだ…。
「よい…。
吉乃を輿から下ろす。」
倒れ込んだ私の体を支えると…私の身体をヒョイと持ち上げてお姫様抱っこ状態のまま“輿”から抱きかかえられて外の風を感じた。
「どこにいかれるのでしょう?」
殿は私をそのまま抱きかかえて答えた。
「‥風にあたると辛いか?
しばしの辛抱じゃ‥皆にそなたを紹介したい。
この信長の正式に正室として‥。」
また…殿は突然何を言い出すのだろうと‥私はこの時内心思った。