『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
殿の両手に抱きかかえられたまま私は‥用意された部屋の中に入ると…広々とした部屋に布団がポツンと場違いに置いてあった。
「ゆっくり体を休めるとよい…。」
殿はゆっくり私を布団の上に寝かせると…掛け布団を首までスッポリと覆うように被せた。
「まるで…夢のようですわ…。
こんなに殿にいたせりつくせりして頂けるなんて…。」
まさか…殿が私を看病してくれるなんて事も今までなかったから…その厚意がたまらなく嬉しくて感極まり涙を浮かべた。
「早う元気になってもらいたい一心で…皆も同じ気持ちじゃ…。
何か温かい物でも…こしらえて運ばせるか?」
私は‥首を横に振った。
「もう…。
胸一杯で何もいりませぬ…。」
「食わなきゃいかん!
こんなに…手も冷たいではないか…腕利きのくすし(医者の事)にも診てもらうとよい。」
それから…と殿は思いつくままに言葉に出したその姿が…相変わらずで吹き出した。
「殿…。
立派になられましたね…。
今日…。
ここにきて…。
それが…よく分かりました…。」