『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「まあ‥。
南蛮の伝道師達が秘密で持ち込んだ書物に殿が…?」
「そうなんですよ…。
その書物に病を完治する術はないかとか…もしくは不老不死になるモノはないかとかあれこれそれはせわしく調べておられる様子で…私がそんなどこの何かも分からぬ邪道な術を用いておかしな事になったらどうなされます…と言ったら私にお主身代わりは得意じゃろう!?
身代わりになるという施しがあるのでやってみろ…とこんな口惜しい事をいうのです!
殿を叱って下さいまし…!」
「まあ…。
身代わりなんて…。」
殿の口まねをしながら話す濃姫は、私の体を起こし薬湯の入った容器を渡した。
私は容器を受け取り口に含むと一気に飲み込んだ。
「ご気分はいかがです?」
濃姫が私の背中をさすり気遣う。
「大丈夫…。
でも…貴女には悪い事をしたわ…。
あんな大勢の御家来衆の前で正室だなんて…本当になんとお詫びしてよいものか…。」
私が先日、拝見の儀で正室の扱いを受けるように宣言された事で…正室である御台所の濃姫に不快な気持ちを抱かせたのではと思っていたのもあり…彼女に深々と謝った。