『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「オホホホ…。
嫌ですわ…。
大丈夫ですわよ…。
私…元よりここに輿入れをした時から…殿を夫だなどと…思った事はございませぬ…。
どちらというと…変わった兄でございましょうか?」
濃姫は…明るく高らかに袖口にお手を添えて笑った。
その様子に幾分かホットして共に声を揃って笑った。
「良かった。
生駒のねえ様の笑い声を聞けないのでは…ないかと心配しておりました…。」
濃姫は…私の笑顔を見て安堵の吐息をついた。
「殿にも…貴女にも心配をかけてしまって…。
本当に…申し訳ないわ…。 」
濃姫に深くお詫びの言葉を述べると…彼女は…首を横に降り顔を曇らせた。
「病のねえ様にこんな話をするのは…どうかと想うのだけど…。
私…。
離縁を…殿に申し出ましたの…。」
えっ…。
濃姫の言葉に私は耳を疑い尋ねた。
「なぜ…?
まさか…。
私が原因とか…?」
悪い予感が横切りすぐさま尋ねたが…濃姫は冷静に切り返した。
「いいえ…。
そうではなくて…。
まあ…強いていえば―明智殿…でしょうか…。」
濃姫の言葉に…殿の御家来衆に加わった明智光秀殿の顔が脳裏に浮かんだ。