『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「それに…?」
言いかけた言葉を飲み込んだ様子で苦潰した表情を見せた濃姫を察し…濃姫の手の上に手を重ねてあえて尋ねた私に深い吐息をつき答えた。
「――私は…。
殿の性格…。
明智殿の性格…。
このお二人の事を重々よく存じております。
しかも…どちらも頭の回転は…早く本音を語る事もありませぬ…。
同じ要素を持つ者は…対立は免れないのではないかと思うのです。
しかも…どちらも完璧主義ときています。
それに加わり…殿は短気な気質故…早急に事を起こす為策を携える性分ですが…明智殿は…慎重さ故か…ゆっくり事を進めていき策を練る性分でもございまする。」
濃姫の言葉に私は息をのんだ。
「…差し詰め背中合わせの策士という間柄という事ですか?」
私の言葉に…濃姫は深く頷いた。
「まさにその表現が…ピッタリと当てはまるかもですわね…。
さすが生駒のねえ様…。
忍びの一族を束ねて商いをなさるだけありますわ…。
濃は…いずれあの二人…。
――近い将来…。
…衝突は避けられぬものと考えておりまする。」