『武士ドルが斬る!?』〈前編〉


 濃姫の言葉が重く部屋に響いた。


 「そう…ですか?
 殿は…その事ご存知なのかしら…?」



 ひとしきりの沈黙の後…私は吐いた息とともに尋ねた。


 「察しているとは…思いまする。

 それでも…あえて近くに置いておるのは…明智殿の欠点を見抜いておられるからではないでしょうか?」


 「明智殿の…欠点?」


 濃姫の意味深な言葉が…ふいに尋ねた私に深く頷き返した。


 「…明智殿は、なんと申しましょうかあ…。

 あまりにも真面目すぎる面が仇となり融通や機転が利かぬとこがございます。
 殿と衝突するとあれば…そういった面が災いとなり思わぬ誤解が惨事を生むやもしれませぬ…。
 殿は…明智殿のそう 言った気質に気付いておられる様子ですが…あえて明智殿が裏切るかどうかを試されている様子です。」


 濃姫は…重く言い放ち…小さく吐息をついた。


 「それで…離縁を申しでたのですか?」


 少し間を開けて…濃姫は答えた。



 「それも一理といったところですかね…。
 いずれ殿は…朝廷に暦の改定の申請を考えておられる所がございます。」


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