『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
肴という名は忍びとしての通り名で、別名…諷馬という名で呼ばれている。
生駒の屋敷で行き交う旅の商いの者達に混ざり…積み荷を運ぶのが表向きな仕事だが、その際に情報を仕入れたり…密書を運んだりという裏稼業を専ら本業としている。
この頃の忍びはまだ…黒ずくめの装束などで顔を覆うような事はなく、薄衣や布地を被ったりわりかし軽装をしている事が多いが…身軽に情報収集する事に長けているのはもちろんの事…武術も嗜んでいる強者も多かった。
そんな諷馬の生い立ちは…戦に巻き込まれた侍女が旅先で倒れた折、通りかかった商いの者に運ばれて生駒の屋敷にたどり着いた後…やや(子供の昔の呼び名)を孕んでいる事がわかり、生駒の屋敷でそのまましばらく仕えた後…諷馬を出産後‥それまでの苦労がたたり母親は亡くなった。
その後…生駒屋敷にて仕えていた表向き商いの夫婦に引き取られた後‥忍びとしての施しを受けて育ち…私が幼い時から兄弟のように仲良く育ったのだ。