『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
「はっ…。
承知致しました。
吉乃様…。
お身体くれぐれもお大事になさって下さい。」
「ありがとう…。
肴…。
濃姫の事頼みましたよ。」
私の言葉に寂しそうな表情で頷き一礼した諷馬が身を翻し部屋をでていく背中を見守った。
サァァァァァ…。
目の前の扉を開けた方向に風が駆け抜けていく音がやたら大きく聞こえた。
「先程…あんな事があったなんて分からぬ程キレイサッパリ亡骸も消えているようですわね…。」
濃姫の声に私は頷いき彼がさった扉の先を見つめた。
諷馬には…きっとこれが最期の別れに感じたからだろうか…。
…それとも…。
…またどこかで会えるからなのか…。
どちらとも言えない気持ちに心を打たれやがて…私は濃姫に身体を支えられたまま横になった。
「ゆっくりお休み下さいませ…。」
薬湯が効いてきたのか…濃姫の声が遠くの風の音と重なった…。
「…さま…。
ねえ…様。」
微かに遠くで聞こえる風の音に混ざり聞こえてくる声を頼りに私は…いつしか眠りにつき夢を見た。