『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
コンコン…。
文箱の美しさに心を奪われて私は文箱の桔梗の花を指で軽く触ろうとした時…。
病室のドアを叩く音がしたのに気付きとっさに濃姫に持っていた文箱を突き返すと…濃姫は胸元にその文箱を入れて隠した。
「失礼します…。
検温に参りました…。」
タイミングよく扉を開けて入ってきた看護士さんにホッと私は肩を撫で下ろしたけれど…濃姫はその看護士さんを冷ややかな瞳で睨み凝視した。
「どうかしたの…?」
濃姫の尋常じゃない看護士さんを凝視する態度に異変を感じ尋ねた。
「あっ…。
いえ…。
私…戸塚教授達を呼んできますわね。」
私が尋ねた言葉に…一瞬戸惑いをみせた濃姫だったが…作り笑いを浮かべると顔を俯いたまま看護士さんとすれ違い様も睨みをきかせて部屋から出て行ってしまった。
「すみません…。」
なんだか気まずい雰囲気に看護士さんに謝った私に…看護士さんはニコリと笑顔で返した。
「いいえ…。
全然…気にしてまへんから…。
逆に大事なお話中か何かでしたん?」
関西弁で看護士さんはサラリと交わして私に体温計を渡しながら答えた。