『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
その様子にホッとしたものの…何となく違和感を覚えて苦笑いを浮かべつつ体温計を受け取り脇に挟んだ。
看護士さんは…相変わらず笑顔を浮かべて私の腕の袖口を捲り血圧を測りはじめた。
なんだろう…。
なんか気になるな…。
「あら…。
なんだかよい香りが…この香り…。
香り袋の匂いとちゃいますか?
ええ香りやわ…。」
先程の文箱の残り香りに気付き…笑いながら血圧を測定しはじめた。
「あっ…。
何かの香りだと思ったら…香り袋の匂いでしたのね…。」
瞬時に残り香を香り袋だと嗅ぎ分けた…この看護士さんに違和感を感じつつ、地元の人だから…と勝手に解釈して深く考えるのをやめた。
だって…関東から関西につくまでの間、ひたすら未明な出来事に脳みそを私なりにフル回転させてきたしスタミナも精神状態も限界だった。
それに…考える事に疲れていたのも正直あったせいか、この看護士さんに違和感を持ったものの疲労からかサラリと受け流した。
そうこうしてる間に…病室の扉を叩く音がして、慌ただしく弟の諷馬と徳家君の背後に見知らぬ中年男性が一緒に病室に入ってきた。