『武士ドルが斬る!?』〈前編〉
私の言葉に半田刑事は‥意味あり気にニヤリと笑った。
「気になりまっか?」
えっ…。
突然の突っ込んだ質問にどう答えるべきか躊躇したのを見て…ハハハと笑い再び続けた。
「いやあ~変な意味じゃおまへん!
ただ‥この事件には最初から理解しがたい事がからんどるからな‥。
例えば‥生駒はんの夢の話もそうやけど‥。
…まあ‥。
何が一番理解出来へん事ゆうたら‥やっぱり殺人事件でもあらへんのに京都署あげて逃亡者確保の事件扱いするように‥文部省関連から通達きたからな‥。
それが‥ほんま驚きやったわ‥。
まああの逃亡者は‥全ての疑いがはれた訳やないけど‥掘れば掘るほど‥国の重要文化を揺るがす物ばかり‥証拠に上がってくるんでな‥。
事実的には‥釈放という形やけど‥人間国宝として文部省関連に引き取られる事は確かやらな‥。
…差し詰め文部省関連で身柄を拘束されるとちゃうかなあ…。」
冷静そうな見かけとは裏腹に…明るく半田刑事は笑って私の顔色を窺った。
「そ…そーなんですか…。
でも…結局身柄を拘束されるんですね…。」
心の中であの逃亡者が…気の毒に思えたのもあったがまた一段と遠い所にいってしまった事が切なかった。